第3回 愛のニュアンス
How to say ‘I love you' in Japanese? (日本語で「I love you」って何て言うの?)”と聞かれることがよくあります。そう聞く相手は、まぁ、口説き文句というか、異性との場が盛り上がったときに相手の目を見て呟く言葉としての”I love you.”の日本語版を知りたいわけです。
直訳すれば、「私はあなたを愛してます」。でも、実際にそういうシチュエーションでそんなふうに丁寧に言う人なんているでしょうか?せいぜい「愛してる」「愛してるよ」「愛してるわ」とかですかね(性別や相手との微妙な距離感によって語尾を変えなきゃいけないのは、外国人が苦労する点でもあります)。でも、やはり「愛してる」という言葉よりは、「好きだよ」の方がよく使われるのではないかと思います。
英語では、”love”という言葉をよく使います。その点、日本人は「愛してる」と言う言葉をあまり使わないので、愛が薄いとか愛の感覚があまりないとか誤解される時もあります。でも、これはそうとも言い切れません。
英語の場合、家族や恋人へのとても強い気持ちに”love”を使う一方、「大好き」とか「ステキ」という意味でも”love”を使います。だから、”I love ice cream.”ってアイスクリームに対してだって”love”を使うし、”What a lovelyday!(なんていい日なんだ!)”と天気を誉める時にだって使います。”love(愛)”の気持ちは幅広く、深くも浅くもあるのです。なので、日本人が何か「大好き」という気持ちを英語で表すときは、「『愛』を使うなんておおげさだ」と思わず、気軽に”love”を使っても大丈夫です。むしろその方が伝わるでしょう。
「愛」にまつわる日本語の特徴の一つには、英語では”love”の一言だけで表現されるものを、「恋」と「愛」に分けている点があります。なので、「恋」と「愛」両方使っている台詞を英語にするのはなかなかやっかいです。
「彼に対する気持ちって、恋ではあったけど、愛ではなかったわ…」
これ、日本語では言わんとすることわかるんですけど、この「恋」と「愛」の微妙なニュアンスの差、英語だとどう表現したらいいのだろう?この場合だと、「恋=like」、「愛=love」を使って、”I just liked him, but I didn't love him.”とすることはできます。彼のこと好きだったけど、愛してなかった。そういう言い方。あとは、”It was just passion, but not love.”もいいかしら。それは単なる情熱であって、愛ではなかった。
だからって、”love”がいつも深い愛情だけを表し、そこには情熱的な「恋」という要素がないかというと、そんなことありません。”Fall in love”という言葉がありますが、この時落ちるのはやっぱり「恋」です。「愛に落ちる」とは言いませんからね。
”Love”という言葉は、その時々によって気持ちの性質や比重を変える、とても奥が深い言葉なのです。そのため、その時々に”love”が抱えているニュアンスを伝えるのは、なかなか難しい。文化的なものの他、個人的な定義も出てきちゃうし。
愛のニュアンスと言えばもう一つ。
ちなみに、セックスのことを英語で”Make love”とも言います。この表現、個人的に結構好きです。「愛を作る」。ポエティックじゃないですか。日本語で「エッチ」とか「性交」とか言うのより、よっぽどロマンチック。
以前、男友達と話している時、彼が”I like making love, but I don't like f***.”と言ってウィンクしました。その気持ち、とてもよくわかるなぁ。ちょっとした、愛のニュアンスですね。