扉を開くとカウンターのイスに、ちょこんと猫が丸くなって寝ていることがある。喧騒の銀座にあってホっとさせられる場面に出くわす店だ。ここはカレー専門店で、メニューは 1 種類だけだが、その量によって風変わりなネーミングがされている。

小盛りは「品川」、普通盛りは「大井」、普通盛り目玉焼き付きは「大森」、大盛り目玉焼き付きは「蒲田」。つまり、京浜東北線の駅名を洒落ているのだ。このカレーには肉は一切使われておらず、玉葱と野菜、果物だけで作られたその味わいは、ほどよい辛さ、奥深い旨みが潜んでいて、これが美味しい。お薦めは目玉焼き付き、半熟の黄身を割ってソースに絡めると、カレーが 2 度楽しめてしまうのだ。

女性客が多いせいか、大盛りのカレーでも量が少ないような気がするので、食いしん坊には裏メニューで「ツン蒲」というものがあり、これは「蒲田」より大盛りでオススメだろう。とにかく、何気なく旨いカレーライスで、 1 度食べたらまた食べたくなる、そんな味わいの逸品だ。

駄洒落好きの先代主人による命名、「辛来飯（カライライス） 蒲田」（￥740）。現在は２代目によってその味が守られている。	昭和の雰囲気を残す店内は居心地がいい。客層は幅広く、店主との会話を楽しみに通う常連客も多い。

ウィンズ銀座の真横にある「共楽」は、 50 年以上変わらぬ味を提供し続けている老舗のラーメン屋である。近隣で働くラーメン好きに愛され続けているゆえんは、喧騒の銀座にあって、ガキの頃に食べなれた、醤油ラーメンの原型が見え隠れする味わいにホっとさせられるからではないか。

店内へ赴けば、右手に 10 席のカウンター、左手の個室風スペースには２卓のテーブル席。こぢんまりとしたスペースに、醤油と魚介などの乾物の香りが立ち込め、その瞬間に胃袋が唸り始める。媚びることのないラーメンのシンプルなデコレーション、スープを一口すすれば、醤油の切れのよい潔い味わい、鼻先を心地よい煮干の風味が香り、ツルツル、モチモチのストレート麺の喉越しもたまらないのだ。昼夜問わずサラリーマンがひしめくのも納得、東京ラーメン健在なり、と胸を張りたい気分。

またワンタンメンも名物で、その秀逸の味わいをぜひ堪能してもらいたい。

「中華そば」（￥ 600 ）に米酢を入れて食べるのが女将のおすすめ。まろやかな味わいを楽しめる。	客層の中心はサラリーマン。気さくな主人と優しい女将が出迎えてくれる。