年末特別企画
2007.11月 File.02

 

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photo by Shigeki Watanabe

なぜか病みつき、グッとくる店

小野:味はさておき、雰囲気で病みつきにさせられてしまう店ってあるよね。

小宮山:そうですね。オヤジさんのキャラクターとか。

島津:お店にいて和む感覚はいいですよね。

小野:そういう店には思わず何度も行ってしまう。

小宮山:代々木八幡に Y というお店があったんですね。大きく「カレーとラーメンの店Y」と看板があって。そこのカレーが 共栄堂 のカレーによく似てるんですけど、マズいんですよ。ラーメンも、僕が好きだった 恵比須ラーメン に似てるけどマズい。

小野・島津: ( 笑 )

小宮山雄飛(こみやま ゆうひ)
ホフディラン(vo、key)
96年にシングル『スマイル』でメジャー・デビュー。 02年に活動休止するも06年9月に、日比谷野外大音楽堂での"SET YOU FREE"で電撃復活。 NEWシングル『カミさまカミサマホトケさま』をリリース。

小宮山:この2つがセットで食べられるんですよ。「 共栄堂 のカレーが食べたいんだけど神保町まで行くのもな……」とか「 恵比須ラーメン 食べたいな……」いう時に、極めて似てるけど美味しくないこの店に行く。

小野:なんとなくストレス発散できる感じ?

小宮山:そうですね。でも、僕がよく行くようになった1ヶ月後ぐらいに突如つぶれてしまって、今となっては食べられないんです。

島津:僕はチェーン展開している の池袋西口店になぜか行っちゃいますね。

小宮山:ええー ! ?

島津:わりとよく通ってます。席数が6席ぐらいで、幅も狭い。厨房側の方が明らかに広いんですね。

小野:あそこはどこも狭いよね。

島津:そうなんです、狭いスペースで苦労して食べないといけません。それと確かに「インドカレー」を出してはいるんですが、厨房ではいつもネパール人シェフが活躍しているんですよ。インド人シェフには会ったことがない。たまたま僕が行った時だけなのかもしれないですけど。さらにお客としてパキスタン人がやってきて、シェフとヒンディー語で盛りあがっていることもしばしばあります。ひとり蚊帳の外にいるような感覚に陥るんですけど、そこが「インドにいるようでいいな〜」と。ちょっとマゾな気分の時にはいいお店かなと思います(笑)。

小野:僕は新宿の モンスナック だね。旨いのかマズいのかよく分からないんだけど ( 笑 ) 、紀伊國屋で買い物をした後なんか、ついふらりと行ってしまう。関東のスープカレーの元祖なのかな。

島津:そう謳ってますね。

小野:あれが妙に食べたくなるんだよ。

小宮山:僕は店内に貼ってある、蛭子能収さんのサインが異常に気になるんですけど。

小野:それは分かる ( 笑 ) 。

小宮山:大阪のなんばにある ニューライト って知ってます ?  芸人さんでもファンが多い定食屋さんなんですけど。 自由軒 のようにスープとライスを混ぜて食べる「セイロンライス」というものを出しているんです。美味しいんですよ、美味しいんですけど、この混ざり方がおかゆみたいな状態なんです。結構ベチャベチャしてて。

小野:食べた、食べた。カレーリゾット !

小宮山:そこもなぜか行ってしまいますね。

島津:ファンが多いので怒られるかもしれないんですが、神保町の はそれほど美味しいとは思わないんですよ。でも、和めるので時々顔を出しています。

小野:僕は大好きだよ ( 笑 ) 。あそこの味はパンチがあるんだよね。

小宮山:最初に入った時は、あの小さなデミダスカップに緊張した。ソースなのか、コーヒーなのか、いつどのタイミングでどうするのかと。

小野:「カレーにかけるのか ? 」って考えるよな。新宿の 蒙古タンメン中本 の「インド丼」もなぜだか食べちゃうな。あれは先代が出していた「インドラーメン」を応用したものなんだよ。このメニューは僕が 10 代の頃からあったんだけど、実際に食べたのは僕を含めてごくわずか。品書きにはあっても滅多に作らなかったから。そういうこともあってなんか懐かしいんだよね。あとは西浅草の ピーター 。普通の喫茶店のカレーライスだけど妙に旨い。とくに二日酔いの時に食べるとグッとはまる。

カレーは二日酔いの特効薬!

島津忠承(しまづ ただつぐ)
1976年埼玉県生まれ。東京のカレーが食べられるお店を500軒以上紹介しているブログ「お気に入りのカレー屋さん500」の作者。雑誌編集の合間にカレーを食べ歩いている。これまでにインド、イギリス、イスラエルなど世界15カ国で600軒あまりのお店を探訪してきた。将来の夢は東京からロンドンまで飛行機に乗らずに旅行し、途上のすべての国でカレーを食べること。好きな言葉は、中国の政治家であるケ小平が発言したことで有名になった「不管K猫白猫、抓住老鼠就是好猫」(白猫であれ黒猫であれ、ネズミを捕るのが良い猫だ)。インド風であれ日本風であれ、おいしければみな良いカレーだと思っている。

小宮山:二日酔いの時に浅草までは行けないですね〜。

島津:できれば外に出たくないです。

小野:僕は行くんだよ。まだ半分酔っぱらいながら「ここのカレーは最高だね〜」っておばちゃんに言ったりして。でもシラフで食べると「あれっ ? 」って場合もあるんだよ。どうも作ってから3日か4日経ったのがいいらしい。おばちゃんがカレー粉と小麦粉をちゃんと練って作ってるんだけど、何気なく旨い。

小宮山:僕はいくら小野師匠のご推薦でも二日酔いで浅草までは行けないです ( 笑 ) 。だから近場で済ませてしまいますけど、辛いものが食べたくなる感覚は分かります。カレーに限らず、ラーメンや韓国料理も食べたくなりますね。唐辛子がいいのかな。

島津:小野さんの本にも書いてありますが、カレーの成分は胃薬とほとんど同じですからね。

小野:軽い二日酔いだったら辛いラーメンでも体調は戻るんだけど、「本当にヤバイな」って時はカレーだね。

小宮山:正直、遠くまで行くのは面倒じゃないですか ?

小野:身体が欲求してるんだよ。二日酔いじゃなくても胃腸の調子が悪かったり、身体のバランスがおかしかったら、インド系のカレーを食べるとシャキッとしてくる。1週間ぶっ通しで食べるたりすると、すごく調子がよくなるんだよね。

島津:漢方薬と一緒なんでしょうね。小野さんを見てても分かりますけど、新陳代謝がよくなるんじゃないでしょうか。年齢よりも圧倒的に若く見えますし。

小野:僕はガキの時から童顔だもん。

小宮山:ガキの時に童顔なのは普通じゃないですか ( 笑 ) 。

小野: 19 歳の時にエロ本読んでたら、本屋のオヤジに「ダメだよ、ボク。中学生だろ ? 」って言われたんだよ。それからヒゲを生やすようになった。

ただ「美味しい」、それだけでいいのだ

小野:漢方と言えば「薬膳カレー」っていうカテゴリーもあるよね。 じねんじょ が有名だけど、下赤塚の 萬吉禎 という蕎麦屋は1日限定 10 食で「薬健カレー」ってのを出してる。あそこのは確かに身体によさそうな感じはするよ。

島津:バスに乗ったりするのでお店に行くまでが大変ですよね。

小野員裕(おの かずひろ)
1959年、北海道に生まれ、東京で育つ。文筆家、出張コック、フードプロデューサー。横濱カレーミュージアム初代名誉館長。 鉄の胃袋を武器に放浪先の大衆食堂、大衆酒場に足繁く出入りするかたわら、カレー伝道者としてカレーの醍醐味についての 布教を地道に続けている。著書に『東京カレー食べつくしガイド104/380店』(講談社)、『週末はカレー日和』(ぴいぷる社)、 『週末は鍋奉行レシピで』(創森社)、『立ち飲み酒』(共同執筆、創森社)、『魂のラーメン』(プレジデンド社)、『ラーメンのある町へ』 (新潮社)、『カレー放浪記』(創森社)など

小宮山:やっぱり薬膳だからね、それぐらい苦労して行かないと。

島津:三軒茶屋の とんがらし でも薬膳カレーを出してました。今も出しているのかな ?  そこのおばさんが言うには「修行僧も美味しさにビックリ」だそうです。

小宮山:修行僧はそこにきていいんですかね ?  修行中なんでしょ ?

小野: ( 笑 )

島津: ( 笑 ) 「ミネラルが豊富なシロキクラゲを入れています」とか書いてありましたね。あとクコの実とかも。

小宮山:修行僧はクコの実ぐらいじゃビックリしないでしょ〜。

小野:でもあそこのカレーはよくできてるよ。ちょっと デリー に似てるんだよな。あとは亀戸の cresson( クレソン ) や中目黒の Ka ・ Ku ・ Ra (カクラ) もあるね。

島津: Ka ・ Ku ・ Ra は栄養士の資格を持った店主が薬膳学を学んで開いたそうですよ。果物や野菜をグツグツ煮込んだ感じですね。あとは白金の 麻布亭 LINO (リノ) というお店でも食べられますね。本業は地図作りという店主が趣味でやっているお店です。

小野:すごくカッコいい精密な地図を描くんだよ。

島津: 40 数種類のスパイスやハーブを煮込んで、浮いてくる油を捨てていくらしいんですよ。それを何日か繰り返して、黒っぽいサラサラのカレーになる。かなりストイックな方なんだと思いますよ。カレーにしても地図にしても、完璧なものを作ろうとする姿勢は通じるんでしょうね。

小野:薬膳とは違うかもしれないけど、新宿御苑にある ぴーまん も身体を気遣ったカレーだよね。野菜がとにかくたくさん摂れる。そういう店って旨くない場合が多いんだけど、ここは味がきちんと成立してる。

島津:1食で食物繊維が 20 グラム、野菜も 440 グラム摂れるそうですよ。カロリーも 650 キロカロリーと低く、やさしい味なので女性にもオススメですよね。

小宮山:野菜ジュースのお店ですよね。僕は青汁が好きなんでジュースだけ飲みに行ってます。僕、青汁は相当詳しいですよ。今度“青汁対談”をする時にまた呼んでください。

小野:それはない ( 笑 ) 。

小宮山:でもみんなカレーに何か求めすぎじゃないですか ?

島津:「ウコンがガン予防になる」とか ?

小宮山:「美味しい」以外に何も望まれていない、ドーナッツぐらいの扱いでいいんですよ。カレーは期待を背負わされすぎてちょっとかわいそう ( 笑 ) 。「旨い」という前提があって、「ちょっと健康になった気がする」というのはラッキーなオプション程度でいい。

小野:もっと解放してやってくれと。

島津:普通に食べればいいじゃんと。でもラーメンとか、ほかの食べ歩き系グルメよりは太りにくいですよね。

小野:それは俺が身体に実証済みだよ。カレー本を執筆するために食べ歩いていた時は体重に変化はなかったけど、ラーメン本では一気に腹が出たからね。そこから戻らないし。

小宮山:臨床実験みたいですね ( 笑 ) 。

「第3回へつづく…」

 


: 店舗DATA :

【共栄堂】
東京都千代田区神田神保町 1-6-B1F
03-3291-1475

【モンスナック】
東京都新宿区新宿 3-17-7-B1F
03-3352-3052

【ニューライト】
大阪府大阪市中央区西心斎橋 2-16-13
06-6211-0720

【自由軒難波本店】
大阪府大阪市中央区難波 3-1-34
06-6631-5564

【蒙古タンメン中本新宿店】
東京都新宿区西新宿 7-8-11-B1F
03-3363-3321

【ピーター】
東京都台東区西浅草 3-13-1
03-3844-5984

 

【薬膳カレーじねんじょ谷中店】
東京都台東区谷中 5-9-25
03-3824-3162

【萬吉禎】
東京都板橋区赤塚 8-10-2
03-3939-5189

【とんがらし】
東京都世田谷区三軒茶屋 1-41-12
03-3487-1401

デリー上野店
東京都文京区湯島 3-42-2
03-3831-7311

【 cresson 】
東京都江東区亀戸 6-13-1
03-5609-2757

【 Ka ・ Ku ・ Ra 】
東京都目黒区上目黒 2-42-13
03-3710-0299

【麻布亭 LINO 】
東京都港区白金 5-10-10
03-3445-5539

【ぴーまん】
東京都新宿区新宿 2-2-1
03-3341-9472