年末特別企画
2007.11月 File.03

 

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photo by Shigeki Watanabe

謎の着色ゆで卵

小野:「個性派カレー」を挙げるならどこになるだろう ?

小宮山: 共栄堂 はどうですか。ここは個性派でもあるし、今となっては“みんなが好きなカレー”ですよね。黒くてトロッとしていて。あれはどうしてるんですか。

小野:小麦粉を入れてるんだよ。

小宮山:あそこって、カレー好きの間では聖地のように有名じゃないですか。だから「みんな知ってるじゃん」って思ってあえて行かなかったんですよ。でも、ついに行って食べてみたら「こんなに旨くて不思議なカレーがあるのか」と。

小野:普通の洋食屋のドロッとしたものとは違うんだよね。ツヤッとしてる。よくできてるよ。

小宮山: 共栄堂 デビューが遅かっただけに、驚きも大きかったんですよね。あとは麻布十番の 大越 。この前初めて行ったんですが。

島津忠承(しまづ ただつぐ)
1976年埼玉県生まれ。東京のカレーが食べられるお店を500軒以上紹介しているブログ「お気に入りのカレー屋さん500」の作者。雑誌編集の合間にカレーを食べ歩いている。これまでにインド、イギリス、イスラエルなど世界15カ国で600軒あまりのお店を探訪してきた。将来の夢は東京からロンドンまで飛行機に乗らずに旅行し、途上のすべての国でカレーを食べること。好きな言葉は、中国の政治家であるケ小平が発言したことで有名になった「不管K猫白猫、抓住老鼠就是好猫」(白猫であれ黒猫であれ、ネズミを捕るのが良い猫だ)。インド風であれ日本風であれ、おいしければみな良いカレーだと思っている。

小野:定食屋だよね。

小宮山:ライスの上にミートソースとカレーが半々に乗っている、「ミカライス」というメニューがあるんです。これはカレーというよりはミートソースが美味しいんですけど、個性的ではあるしトータルで旨かった。

島津:日本橋の カレー革命 も面白いですよ。バングラディッシュ人のオーナーが、インドカレーを出しているんです。それも日本人の口に合うようにしよう、というチャレンジ精神が旺盛で「カレーちゃんこ鍋」「カレーチャーハン」「石焼カレー」といったメニューがあります。それが好評で八丁堀や新富町に支店ができるまでになったんですが。

小宮山:でも、あのお店でちょっと納得のいかないことがあるんですよ。トッピングのゆで卵を黄色く着色してるでしょ。

島津:してますね。

小宮山:あの意味がわからない !  店頭のメニュー写真だと大きな黄身に見えるんですよ。だから「こんなに大きな黄身なんだ、美味しそうだな」と思って待っていると、運ばれてくるのはただのゆで卵。たぶん味も変わってないよね ?  あれだけは謎だな〜。

小野: ( 笑 ) でもあのメニューは日本人の作るものだよね。バングラディッシュ人がここまでやるか ?  と思う。

島津:小宮山さんの納得が行かない写真も含めて、話のタネを作ろうとする精神に「やるな〜」と思うんですよ。

小野:僕はちょっと都心から離れるんだけど、松蔭神社前の 贋作インドカリーマシバシイネツルカモ 。まずこの店名に惹かれるよね。読みづらい言葉なのに思わず覚えてしまう。司馬遼太郎の小説に出てくる古語からとったらしい。それに加えて店自体も個性的なんだよ。

島津:昔ながらの商店といった雰囲気を生かしている店ですよね。

小野:最初「畳屋かな ? 」って思ったぐらいだよ。不思議に思いながら店に入ったら、オブジェがいっぱいに飾られてるし。店主は若い女性で、きちんとコック服に身を包んでせっせとカレーを作ってる。それがなかなか美味しくて「コイツ、センスあるな」って。ちょっと浮世離れした雰囲気もいい。

島津:カレーも週替わりでいろいろ工夫してますよね。

 

いい顔をしているオヤジの店は旨い

小野:上板橋にある Curry&Bar J もいいよ。夜はサッカーバーになるんだけど、極上のサラサラカレーが食べられる。最初は塩気がちょっと物足りないと思ってても、食べ進むうちにちょうどいい感じになるんだよ。オヤジさんが旨いものを作るいい顔をしてるし、これから期待してる店だね。

島津:渋谷の おまかせ亭 という洋食屋のキャッチコピーが面白いんですよ。“超豪華な食材や、贅沢なものは一切ありません。ただ、皆様をお迎えする心だけは誰にも負けないくらいたくさんあります”と謳っている。人によっては嫌がるかもしれないですけど、飲み終えた瞬間にコーヒーを注ぎにくるぐらい、すごくサポートが細かいんですよ。「どこに目があんの ? 」っていう感じで。

小野員裕(おの かずひろ)
1959年、北海道に生まれ、東京で育つ。文筆家、出張コック、フードプロデューサー。横濱カレーミュージアム初代名誉館長。 鉄の胃袋を武器に放浪先の大衆食堂、大衆酒場に足繁く出入りするかたわら、カレー伝道者としてカレーの醍醐味についての 布教を地道に続けている。著書に『東京カレー食べつくしガイド104/380店』(講談社)、『週末はカレー日和』(ぴいぷる社)、 『週末は鍋奉行レシピで』(創森社)、『立ち飲み酒』(共同執筆、創森社)、『魂のラーメン』(プレジデンド社)、『ラーメンのある町へ』 (新潮社)、『カレー放浪記』(創森社)など

小宮山:へぇ。

島津:ここの「オニオンカレーライス」はカレーソースが手鍋に入って出てくるんですね。サラサラしているんですが、インド風ともちょっと違う。タマネギは溶け込んでいる感じです。このカレーソースをスプーンですくって食べていると、叱られるんですよ。「全部かけて混ぜろ」と。言うなれば「ぶっかけご飯」みたいになるんですけど、それが結構美味しいんですよね。

小野:今どきそういう店主は珍しい。

島津:あくまでも優しい口調ですけど。あとは銀座の ニューキャッスル ですかね。

小野:僕もそこは考えた。

島津:2代目店主となってからもメニューのダジャレは健在ですからね。京浜東北線の「品川(小盛り)」から始まって「大井町(多い)」「大森(大盛り)」「蒲田(大盛り+目玉焼き)」、裏メニューの「ツン蒲(ツンのめった蒲田、超大盛り)」で終わる。

小宮山:北品川にある ロビンソンクルーソーカレーハウス も気になります。もともと、この店は市ヶ谷の駅前にあったんです。僕らホフ・ディランが使っていたスタジオが近かったのでよく行っていたんですよ。ここは辛さを 10 倍、 20 倍と表示しているお店なんですけど、 2000 倍とかあるんですよ ! ?  50 倍以上を食べると店内に名前を貼ってもらえるのかな。

島津:ウワサだと 25 倍から 50 倍ぐらいまではほとんど変わってないとか ( 笑 ) 。

小宮山:そうなの ?  でも「これは食えないな〜」と思いながら、5倍ぐらいで止めてました。辛さで勝負じゃないですけど、娯楽性も打ち出してるお店にしては美味しいんですよ。よく行っていたというせいもあって、お店がなくなっているのに気付いた時に意外と「寂しいな」と思っている自分がいて。いろいろとネットで調べたら北品川に移転しているのが分かったんです。未だに行列ができたり、 50 倍以上に挑戦する人もいたりして盛り上っているようなので、そのうち行きたいんですよね。

小野:今度行ってみよう。

小宮山:小野さんだったら、たぶん 50 倍ぐらいから食べた方がいいですよ。

小野:そんなにいけないよ〜。高校の頃なら話は別だけど。

島津:でも最近、辛いのに強い人が増えましたよね。「 エチオピア の 70 倍を食べた」とか、ネットを見てるとゴロゴロいますからね。

小野:ありえない、すごいね。

小宮山:昔はそういうチャレンジ精神もありましたけど、最近はないですね。だんだん何のためにチャレンジしているのか分からなくなってきてしまって ( 笑 ) 。

小野:僕も 20 代までだったな。次の日しんどくなるだけだからさ。変な話、今はウォシュレットトイレがあるからまだいいけどね ( 笑 ) 。

小宮山・島津:確かに ( 笑 ) 。

キーワードは“南インド”と“シンガポール”、そして“エビ” !?

島津:最近のカレーシーンを見ていて“南インド”はキーワードかなと思うんですが。

小野:そうだね。日本の飲食店で提供されるカレーは、インドカレーがメインと考えてもいいと思うんだけど、そのうち北インド系が9割以上なんだよね。ドロッとしたカレーをナンで食べるというスタイル。ライスと一緒に食べるスパイシーな南インドカレーを食べられるのは都内では ダバ・インディアカレーリーフダルマサーガラ 、 A ・ Raj( エーラージ ) など数店しかない。

小宮山雄飛(こみやま ゆうひ)
ホフディラン(vo、key)
96年にシングル『スマイル』でメジャー・デビュー。 02年に活動休止するも06年9月に、日比谷野外大音楽堂での"SET YOU FREE"で電撃復活。 NEWシングル『カミさまカミサマホトケさま』をリリース。

島津:そういった中で ダバ・インディア が連日満員になったりして、ちょっとブームになりつつありますよね。1店だけでなく、他のお店も頑張って出てきて定着してくれると嬉しいです。

小野:南インドで食べられている味を、そのまま日本で出す必要はないかもしれないね。あれを踏襲した形で日本人に馴染みやすいカレーを作ってほしいなとは思う。あくまで日本で、日本人向けに出すのであればね。

島津:なるほど。僕は個人的にシンガポール料理が好きなんですよ。あそこにはインド系、マレーシア系、中国系とたくさんの移民がいます。その三者が交じり合ってできた料理がとても美味しいんです。

小宮山:シンガポール料理は美味しいって聞くね。

島津:カレーにしても、ココナッツミルクを効かせたマレー系のものや、南インド系の移民が生みだした「フィッシュヘッドカレー」というものがあるんですけど。

小野:魚の頭で作ったやつか。あれはめちゃくちゃ旨いね。

島津:小さい国なのでなかなか注目が集まりづらいんですけど、最近は都内でもシンガポール料理店の出店が続いているんです。銀座マロニエゲートの RAFFLES TERRACE( ラッフルズテラス ) もそうですし、豊洲にも KRISTON( クリストン ) というお店ができました。それぞれ話題の場所なので、これからシンガポール料理、シンガポールカレーが目立ってきてくれると嬉しいですね。

小宮山:僕はカレーとはちょっと違うんですけど、とにかくエビを食べたいんですよね。

小野・島津:ええ !?

小宮山:とにかくエビが大好きなんですよ。日本人は世界で1番エビを食べてはいるんですけど、よくよく考えるとエビだけを食べられる店ってないですよね。

小野:確かにそうだ。フリッターにしても天ぷらにしても、いくつかあるメニューの中の1つでしかない。

小宮山:でも僕はひたすらエビだけ食べたいんです ( 笑 ) 。それも高級な伊勢エビとかではなく、安いエビ。ロサンゼルスに killer shrimp (キラーシュリンプ) というお店があって、そこはカレーに似たスープでエビを食べるんです。エビだけを。スープにはターメリックとかが入っていて、パスタやリゾットを入れるといったオプションもあるんですけど、基本はパン。メニューもこれのみ。

小野:エビはいいダシが出るからね、旨いんだろうね。

小宮山:旨いんですよ !  そのお店はもともと1軒だけだったんですけど、有名になってユニバーサルスタジオのフードコートにも出店したんです。だからそのうち日本にも進出してくるかもしれないですね。いや、進出してほしい。そして一刻も早くエビブームがきてほしい。

小野:それは「エビカレー」じゃダメなの ?

小宮山:「エビカレー」じゃなくて、カレー味をつけたエビだけを食べたいんです。ご飯はありつつも。

小野:それじゃ「エビカレー」じゃなくて「カレーエビ」だよ ( 笑 ) 。

「第4回へつづく…」

 


: 店舗DATA :

【共栄堂】
東京都千代田区神田神保町 1-6-B1F
03-3291-1475

【大越】
東京都港区東麻布 3-4-17
03-3583-7054

【カレー革命日本橋本店】
東京都中央区日本橋蛎殻町 1-17-2
03-3639-3359

【贋作インドカリーマシバシイネツルカモ】
東京都世田谷区世田谷 4-3-17-101
03-3425-2975

 

【 Curry&Bar J 】
東京都板橋区上板橋 3-2-1
03-3931-1136

【おまかせ亭】
東京都渋谷区渋谷 1-9-5-B1F
03-3409-7369

ニューキャッスル
東京都中央区銀座 2-3-1
03-3561-2929

【ロビンソンクルーソーカレーハウス】
東京都品川区北品川 1-25-6
03-5479-8955

【エチオピア本店】
東京都千代田区神田小川町 3-10-6
03-3295-4310

 

【ダバ・インディア】
東京都中央区八重洲 2-7-9
03-3272-7160

【カレーリーフ】
東京都中野区東中野 3-1-2-2F
03-5330-5134

【ダルマサーガラ】
東京都中央区銀座 4-14-6-2F
03-3545-5588

A ・ Raj
東京都豊島区南池袋 2-42-7
03-3981-9688

【 RAFFLES TERRACE 】
東京都中央区銀座 2-2-14 マロニエゲート 11F
03-3563-0151

【 KRISTON 】
東京都江東区豊洲 2-4-9
アーバンドッグららぽーと豊洲 FOOD CIRCUS 内
03-6910-1438