年末特別企画
2007.12月 File.03

 

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photo by Shigeo Kikuchi

ライスと食べればなお旨し、濃厚ガッツリ味噌

立石憲司(たていしけんじ)
1964年、豚骨ラーメンの本場、福岡県生まれる。 小学2年生の頃より、博多や久留米のラーメンの指名食いしていた。 学生時代は社会学のゼミで福岡県のラーメンに関するレポートを提出するほどのラーメン好き。 上京後、豚骨以外のラーメンに出会い、バリエーションの豊富さに驚き、さらにラーメンにのめり込み始める。 1999年1月に放映された「TVチャンピオン」(テレビ東京)の「第5回ラーメン王選手権」で優勝。以後、雑誌やテレビで活躍中。

北島:味噌ラーメンのオススメといえばどこになります?

立石: 弥彦 ですね。幡ヶ谷にある 我武者羅(がむしゃら) のセカンドブランドになるんですが。土日限定の営業なのでプレミアム感がありますよね。メニューは「濃厚味噌らあめん」と「濃厚味噌伽哩らあめん」と「濃厚味噌つけめん」の3種類です。「濃厚味噌らあめん」はご飯と一緒に食べると美味しいですよ。

北島:僕は横浜市営地下鉄吉野町駅の 流星軒 。ここはもともとスッキリした醤油ラーメンで人気になった店なんですが、「流星パンチ」という名前で味噌も出しているんですよ。これが上品な醤油ラーメンからは想像もつかないような濃厚な味で。

立石:(笑)

北島:あんなに強烈で濃厚な味噌ってあんまりないですね。ガッツンガッツンきます。

小野:札幌ラーメン系の味噌とは違うのかな?

北島:ひき肉の味噌炒めに近い感じですね。野菜がタップリでザックザクした食べ応えですね。ボリュームも結構あります。ライスを頼んで、残った肉味噌スープをかけて食べると「このまま死んでもいいかな」と思っちゃいます(笑)。旨いですよ〜。ちなみに吉野町の駅を挟んで反対側には旭川ラーメンの ぺーぱん があるんです。

小野:最近行ってないなぁ。でもあそこも旨いよね。

北島:味噌・塩・醤油、どれをとってもいいですね。だからこのエリアは駅を挟んで、いい店が2軒揃っているんですよ。

小野:僕はやっぱり 蒙古タンメン中本 になるかな。辛さに強い人じゃないと食べられないかもしれないけど、「味噌卵麺(みそらんめん)」がいい。

立石:基本の「味噌タンメン」じゃないんですか?

小野:迷ってしまうんだけどね。やっぱり無性に食べたくなる味ではある。

立石:僕もやっぱり ラーメン二郎 は行列がなかったりすると「ラッキー」と思って、すぐに入ってしまいます。

北島: 桂花 も同じですね。今や 桂花 よりおいしい店もたくさん知っているんだけど、どうしてもラーメンに目覚めさせてくれた店、味を食べたくなってしまう。

小野:僕たちにとってのソウルフードなんだろうね。

北島:おふくろの味じゃないけど、「誰がなんと言おうとしょうがない、旨い」って思います。

コッテリ豚骨ラーメンVSアッサリ豚骨ラーメン

小野員裕(おの かずひろ)
1959年、北海道に生まれ、東京で育つ。文筆家、出張コック、フードプロデューサー。横濱カレーミュージアム初代名誉館長。 鉄の胃袋を武器に放浪先の大衆食堂、大衆酒場に足繁く出入りするかたわら、カレー伝道者としてカレーの醍醐味についての 布教を地道に続けている。著書に『東京カレー食べつくしガイド104/380店』(講談社)、『週末はカレー日和』(ぴいぷる社)、 『週末は鍋奉行レシピで』(創森社)、『立ち飲み酒』(共同執筆、創森社)、『魂のラーメン』(プレジデンド社)、『ラーメンのある町へ』 (新潮社)、『カレー放浪記』(創森社)など

小野:豚骨もしくは豚骨醤油だったら? 僕は“家系”の総本山。

北島・立石: 吉村家

小野:やっぱりあの店はすごいと思う。ちょっとオヤジさんが恐いけど(笑)。

立石:無意味に恐いわけではないんですよね。

小野:そう。オヤジさんは「自分の店を持つ」という目標を持って修行に来ている従業員を怒っているだけだから。常にではないしね。

北島:体育会系のノリに近いものがありますよね。

小野:「あのオヤジさんの下についたのだから仕方ない」と思う。

立石:彼らも覚悟して働いてますしね。

小野:何よりも、あのラーメンを完成させたことがすごい。ストロークが短くてズッ、ズッとすする麺に絡む、濃厚な豚骨醤油の旨みがダイレクトに伝わるスープ。コストパフォーマンスも高いんだよ。とにかくサービス精神が旺盛だと思う。あそこから暖簾わけして旅立っていった人がたくさんいることを考えても、やっぱり素晴らしい店だよね。

立石:じゃあ僕は豚骨にしましょう。オーソドックスな博多系のラーメンで、大塚の ぼたん ですね。駅から近いし、さほど混んでもいないのでオススメです。ここは足立にある 田中商店 から暖簾わけしたお店です。 田中商店 ももちろん美味しいんですけど、行列がすごいし営業時間が夜だけなんですよ。それに比べて昼も営業していますから、行きやすいと思います。豚骨のコラーゲンがたっぷりの、濃厚なとろりとしたスープです。チャーシューもやけに美味しかったりするんですよ。

北島:博多風のこってりした豚骨が好きな方にはいいですよね。なら僕は、反対に豚骨がちょっと苦手という方にもオススメできるお店、神泉の 麺の坊砦(めんのぼうとりで) ですね。ここで食べてやっぱり苦手なら仕方ないという最終兵器ですね。

小野:(笑)

北島:滑らかで濃厚なんだけどクセがない。かと言って、物足りなさを感じることもないんですよね。餃子は博多の一口餃子なので、口を大きく開けなくてもパクパク食べられるので、女性にもいいと思います。

立石:爪楊枝にペパーミントの風味がついているんですよね。そういった細かな心配りももちろんですが、店主の意志を従業員がしっかりと心得ているなとも思います。今年になって自家製麺に切り替えたんですが、半年以上、気象データと突き合わせながら研究しつづけたそうなんですよ。そのあたりの熱心さも素晴らしいですよね。

ラーメンにもオーラがある!?

北島秀一(きたじましゅういち)
日本ラーメン協会副会長。1963年広島県生まれ。進学のため上京後にラーメンに 開眼。サラリーマン時代は外回り、地方出張の機会を見つけてはラーメンを食べ 歩く。「TVチャンピオン第三回ラーメン王選手権」準優勝後、1999年に「新横浜 ラーメン博物館」に転職し、主に広報・企画・情報発信を担当。2003年独立後は フリーのラーメンジャーナリストとして活動中。また携帯情報サイト「超らーめ んナビ」では「達人」として情報発信中。

小野:つけ麺となると、どうも僕は最近似たようなお店ばかり出てくるような気がするんだけど。

北島:良くも悪くも 六厘舎(ろくりんしゃ) の大人気に影響されてますから。インパクトのあるものだけが受けるという誤解も多いように思います。

小野:確かにそうかもしれない。僕は今の流行とは違うんだけど、中野の 栄楽 がオススメなんだよね。いわゆる酸っぱい系のつけ麺で、いつも安心して食べられる。でも、悲しいかな取材拒否(笑)。大好きなんだけどね。

立石:僕もたまに行きますよ。「つけそば・チャーシュー入り」は、チャーシューたっぷりで美味しいですよね。では僕は新しい店を出しましょう。代々木にある 麺恋処いそじ(めんこいどころ・いそじ)

北島:7月ぐらいにできたお店ですよね。

小野:知らないな〜。どんな感じなの?

立石:見た目は べんてん に似ていますね。ツルツルとした自家製麺で、ボリュームもあります。スープがアツアツで、割りスープをすると魚粉をかけてくれますし。新店ですが 15 時ぐらいになっても客足は途絶えませんし、行くなら今が狙い目かもしれません。 11 時 30 分から 19 時まで、休憩時間なしで営業しているから行きやすいですしね。

北島:見た目は豚骨醤油なんですが、牛を使っているんですよね。食べると牛独特の甘みがあって、そのクセが全体をユニークにしている。

立石:それが嫌な感じがまったくなく、プラスに働いていますよね。

北島:先ほど小野さんが、「似たようなお店が多い」とおっしゃいましたが、だからこそ僕は木場の 吉左右(きっそう) を推しますよ。「こういうスタイルのつけ麺も食べてみて」と。開店段階で 30 人ぐらい並んでいることもある人気店です。豚骨魚介スープの濃厚なタイプなんですけど、やたらとパワフルなだけではなくて、滑らかさとコクとが非常にいいバランスになっています。それに こうかいぼう と一緒で、店主夫婦のコンビネーションと接客がバツグンにいいですね。

立石:繰り返しになりますが、接客も大事ですよね。

北島:対応が丁寧でも心が入っていない接客って、店側が思う以上に客は見抜けるものなんですよ。なんだかロボットが対応しているような。丁寧だし、笑顔だし、かがんでオーダーを聞いてもらえるんだけど……。

小野:魂がこもってないんだよね。

北島:僕はラーメンのオーラが見えるんですよ。

小野:え?

北島:オーラというか、店主の人柄ですよね。

小野:そういうことか。ビックリした〜。いきなりスピリチュアルな方向に行くのかと思った(笑)。

立石:(笑)結局、美味しいラーメンって、“愛情”が入っているかどうか、そこに尽きるような気はしますよね。


: 店舗DATA :

【 新潟濃厚味噌 弥彦(我武者羅) 】
東京都渋谷区幡ケ谷2-1-5
03-6772-7200

【 流星軒】
神奈川県横浜市南区日枝町 4-97-2
045-241-1238

【元祖旭川ラーメン ぺーぱん】
神奈川県 横浜市南区高砂町 3-34
045-243-0595

【蒙古タンメン中本 上板橋本店】
東京都板橋区桜川 3-5-1
03-5398-1233  

【ラーメン二郎 三田本店】
東京都港区三田 2-16-4
電話非公開

【桂花 渋谷センター街店】
東京都渋谷区宇田川町 27-1
03-3462-5231

【吉村家】
神奈川県横浜市西区南幸 2-12-6
045-322-9988

【 博多長浜らーめんぼたん】
東京都 豊島区北大塚 2-12-3  
03-3915-8641

【田中商店】
東京都足立区一ツ家 2-14-6
03-3860-3232

【麺の坊 砦】
東京都渋谷区神泉町 20-23
03-3780-4450

【六厘舎】
東京都品川区大崎 3-14-10
03-5434-0566

【 栄楽】
東京都 中野区新井 2-1-1 
03-3386-1803

【麺恋処 いそじ】
東京都渋谷区代々木 1-14-5  
03-3378-6555

べんてん
東京都豊島区高田 3-10-21
電話非公開

【麺屋 吉左右】
東京都 江東区 東陽1-11-3
03-3699-5929

こうかいぼう
東京都江東区深川 2-13-10
03-5620-4777