赤羽駅東口左手に「赤羽一番街」の入り口、その右側に「赤羽一番街シルクロード」という、見落としてしまいそうな小さな商店街がある。その中のどん詰まりの左手に「丸健水産 」 というおでん種専門店がある。

昼は、おやつ代わりにおでんをつつく子供、持ち帰りの主婦、おばあちゃんで賑わっているが、日が暮れかかる頃、立ち飲みスタイルで、キャッシュオンデリバリーの飲み屋に変貌するのだ（昼間からも飲めるけど）。

創業は昭和 33年。初代の頃はおでん種と持ち帰り用だけを販売していたが、現在切り盛りする２代目の主人になってから、お酒も提供するようになったそうだ。

ここで自家製される「はんぺん」は、平成８年「第 49回全国蒲鉾品評会水産庁長官賞」を受賞した代物。お勧めはもちろん日本一の「はんぺん」。また「スタミナ（ニラ・にんじん・もやし・ゴマ・七味などが入った練り物）」、「さつまあげ」などの練り物も人気メニューで、はんぺんは注文を受けてからおでん鍋に投入し、客に提供する丁寧な仕事振りである。

ここで是非飲んでもらいたいのが、東京 23区唯一の地酒、地元赤羽の「小山酒造」の銘酒、丸眞正宗の「マルカップ」だ。これをチビチビとやりながら、おでんをつつけば、もう至福この上ない。

客層は地元の隠居衆、サクっと１杯で帰るサラリーマン、カップルなど、日に 100人前後の客数があり、夕方６時を過ぎる頃には2、30人が店に群がっているのには驚かされる。初心者は「おでんセット」がいいだろう。ビール・チューハイ・日本酒から１つをチョイスして、おまかせ（おでん５品前後）で700円とは実にありがたい価格設定だ。自家製されるおでん種は常時40種類前後。練り物のほかにも季節の野菜（じゃがいも・筍・にんじん・里芋など）もあり、客を飽きさせない。フラっと立ち寄れば旅人の気分が味わえる。

左から「スタミナ」 ( ￥ 240) 、「はんぺん」（￥ 110 ）、「牛スジ」（￥ 220 ）、丸眞正宗の「マルカップ」（￥ 300 ）。辛子はもちろん、七味でいただくのもお勧め。	二代目店主の堀井氏。兄貴肌な彼の人柄を慕って集う客も多い。注文の合間に客と交わされる軽妙なやり取りはこの店のもう１つの名物。

ＪＲ赤羽駅東口から大通りを渡り「ＬａＬａガーデン・スズラン通り商店街」のアーケードを進む。最初の角を右折、ダイエー手前の細い路地沿いに、 地元の人々に愛され続ける 「満月」がある。 創業は昭和 48年。この店名、「お客さんが満ちるように」と願いを込めてネーミングされたそうだ。家族経営ゆえ、店内はアットホームな雰囲気に満ちている。

ここのラーメンの特長は、 保存料や凝固材を使わないため、朝と昼２回に分けて 自家製される孟宗竹で手打ちされた麺と、余計な小細工がされていない潔い醤油スープにある。どこか生姜のような微かな風味、キリっとしまった醤油スープに、トロトロとほぐれるバラの焼き豚が、サッパリとした味わいを心地よく穢してくれるのだ。野菜などの素材にも気を配り、限りなく添加物を押さえた作りだからか、体調が優れないときでも、ここのラーメンはすんなり胃袋に収まってしまうし、いついただいても飽きのこない味わいなのだ。

夏場の「冷やし中華」も実に心地よく、歯ごたえ舌触りのいい手打ち麺と、仄かに甘酸っぱいタレがよく調和がとれていて、ホっとさせられるのだ。

その他、人気メニューは「白味噌らーめん」、「ねぎ肉らーめん」、「ざるらーめん」など。また、季節限定の変り種ラーメンも数多く揃え、冷たい麺でいただく「茄子ラーメン」は今の時期もってこいだ。限定メニューからレギュラーメニュー入りした「豚煮ラーメン」、これもいけるぞ

「らーめん」（￥ 620 ）はサッパリとしたやさしい味わい。限定メニューは季節ごとに変わるのだとか。秋口からは「きのこらーめん」が登場する予定。	テーブル席を中心とした店内には「満月」にちなみ、さまざまな“たぬき”の置き物が。多くは客からのプレゼントだそう。