2007.6月 File.01

●今週の鳥肌店

銀座「新ばし 牛かつ おか田」

●今週のおすすめ

銀座「天はる」 「ぶたBEN」

●今週の裏メニュー

「行き着く先はオヤジ天国」

 


イラスト: 青木健

サラリーマン成りたての丁稚の頃、先輩に連れられて新橋で飲む機会があった。

その時、目に映った光景は、ラーメン屋にもかかわらずチューハイやホッピーをあおる背広姿のオヤジ連中や、高架下の居酒屋で、ヨレヨレのネクタイを緩めながら焼き鳥に食いつき、学生街の若者よりおおはしゃぎするサラリーマン。僕はそんな連中に嫌悪し、それを育むこの新橋自体が大嫌いになった。それからだった、先輩に誘われても、断り続け、この街には足を向けないようにしていた。

でも、いつからだったか、あれだけ毛嫌いしていたはずの新橋の大衆居酒屋にのめり込んでいったのは……。

当時、サラリーマンが日本を支えていることも知らないし、会社というコミュニティに縛られて働く彼らをどこか軽蔑していたし、何よりもあのだらしないオヤジの姿が許せなかった。でも誰もが年齢を重ねれば、人間の悲哀やそれに裏打ちされた喜びが理解できるようになるものだ。僕も年齢と共に、この新橋のオヤジ天国の居酒屋が楽しくて仕方なくなってきたのだ。

堅苦しい社会を生きるには、ガス抜きする場所が必要、新橋はそんな街なのである。