2007.7月 File.04

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上野・御徒町・湯島
「民華」

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上野・御徒町・湯島
「ステーキカウンターポパイ」 「らーめん天神下 大喜」

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「灰色のコートは遠い胸を病む思い出」

 

 

 


イラスト: 青木健

「お元気でお過ごしですか。私は現在、○○○にある高校に赴任して古典の教鞭をとる傍ら、ハンドボール部の顧問もしております。部活でやんちゃな高校生と接していると、なんだか小野さんが懐かしくて、手紙を記している次第です。
〜中略〜

小野さんの自由奔放な生き方に苛立ちを覚えたのは事実です。貴方は『学校の先生なんて、社会生活で育まれなければならないはずの人間性が欠如した連中ばかりだ。そんな輩が人の道なんて説けるわけがない……』と言いましたが、私は純粋培養でいいから、早く教職に就きたかった。将来に対する焦燥感にさいなまれ、こんな結果になったのだと思います。越し方行く末、お互い幸福だったと思える日が、たぶん来るのでしょうね。いま、この手紙をしたためている職員室の窓外には、八甲田山が遠方に煙っています。〜後略〜」

付き合っていた先輩からの手紙だった。

灰色のコートは遠い胸を病む思い出

僕じゃない人と腕組み 

僕じゃない人に微笑み 

僕じゃない瞳を見つめ 

二人で歩く後ろ姿に立ち止まる僕 

君は振り返り

僕じゃない人から腕をはずす…

灰色のコートの女性に出会うたび

体を凍らせたあの陽炎

いつまでも僕を苦しめる

灰色のコートは遠い胸を病む思い出

辛くてこんな詩を書いた。悲しいことに二股をかけられていたのだ、ただそれだけ。 

彼女が卒業して実家に帰るとき、上野駅前の「 聚楽」で食事をして、 西郷さんの銅像の下で、 しばらく話をしながら別れを惜しんでいた。ふられたはずの僕が、東京最後の日になぜ彼女を見送ったのか、いまだ不思議で仕方がない。

上野は僕にとってそんな街でもある。