2007.8月 File.04

●今週の鳥肌店

蒲田
「鳥万」

●今週のおすすめ

新宿
[ニーハオ]

●今週の裏メニュー

「濃密濃厚! “彼女”たちとのバイト体験」

 

 

 


イラスト: 青木健

「あなたがS君の代わりに来てくれた人、助かるわ〜」
と 50 半ばのママ。と言っても野太い声の熊のような男で、チャイナドレスで体を小さく見せようとするためか、不自然な猫背が痛々しかった。

京浜東北線蒲田駅にあるオカマバーに、友人の変わりに3日間だけ派遣されたときの話。仕事はカクテルや焼きそばなどの簡単な厨房仕事を任されたのだ。この手の店は初めての体験で、見るものすべてが新鮮、いや怖かった。 20 人入れば目一杯のフロアーの中央に小さなステージがあり、そこで3回のショーが行われるのだ。

「お待たせしました、ショータイムです」

厨房が衣装部屋に早代わり、踊り子といっても男ながら、目の前で素っ裸になられるのには閉口した。豊胸した胸、男性自身がないもの、または竿だけのものと、もうワケがわからない。宝塚張りの衣装に着替えてステージに繰り出して行くのだが、ちょいと踊ったかと思ったら、●●●にローソクを立てて開脚してみせたり、膨張させた自らの股間を露にし、それを棒に見立てて投げ輪の要領でワッパを客に投げさせる世にもおぞましいパフォーマンスの連続。客は 40 前後の女性が大半で、若かった僕はちょいと女性不信に陥るのだった。

アルバイトの最終日。厨房に入ると、店の中では一番女性に見えるリンちゃんというオカマが、冷蔵庫の陰にうずくまって泣いているのだ。

「同棲していた男に貯金通帳を持ち逃げされたらしいのよ」
と同僚たちに慰められながら、まるで女のように泣きじゃくる彼女( ? )。この日は大賑わいで、客が入れ替わり立ち代り押し寄せ、皿洗いをしながら、酒を作り、フライパンを振るう忙しさだった。

夜中の2時頃にチンピラ風の酔っ払いの客が入ってきて、入店を断ったら暴れ始めた。途端、しおらしかったリンちゃんが、いきなりその客の胸倉を掴んで表に引きずり出して行ったのだ。勝手口から回って表の様子を眺めていたら、ママと一緒に客をボコボコにする始末。こりゃ並の男より男だよ。

「小野ちゃんお疲れ様、またS君いないときヘルプたのむわね」
  腹が減っているというので、中華料理を3品ほど作り、店を閉めてささやかな別れの宴。

「料理ほんと上手ね、ビックリ」
とオカマに囲まれて、股間をまさぐられ、唇を無理やり奪われながら夜明けまで飲み続けた。右も左もわからなかった頃の濃厚濃密な、ちょいと寂しい思い出だ。