2007.9月 File.03

●今週の鳥肌店

下北沢
「虎の子」

●今週のおすすめ

下北沢
[cafe ZINC]
[下北洋食屋 マック]

●今週の裏メニュー

「下北沢、一考」

photo by Shigeo Kikuchi

道行く誰もが覗き込む怪しい存在感

屋根を突き抜ける樹齢 60 年余りの桜の木、笹の葉に覆われた佇まいは、骨董屋か手打ち蕎麦屋を思わせる平屋の一軒家風情。道行く人の誰もが、思わず中を覗き込む、怪しい存在感を投げかける。

店内へ赴けば、表から見える桜の木が左手壁側から天井を貫き、 古民家の廃材でこしらえた店内中央のテーブルは8席。大臼の上に板を載せ、囲炉裏風に仕立てられたこの場所が特等席。表を眺めながら酒をいただけば、 まるで箱庭の中で酔いしれる感覚が気持ちいい。 その奥は長方形の深紅のテーブル、無理をすれば 10席は確保できそうだ。

「当店、酔処につき、お酒を召し上がらないお客様はお断りすることがございます」 と店先に但し書き。当たり前だけど、ここは飲み屋である。

気風のいい姉さん、男前のオーナー萩原公子氏。元の職業はヘアメイク、料理好きが高じて虎の子の貯金をはたいて、まさに「虎の子」をオープンさせたのは6年前。

店一押しのメニューは、安曇野産の「馬刺」。赤身、中トロ、大トロと3種類あり、これが口中でとろけて焼酎がクイクイと進むのだ。また「本日の食材」(例・真鯛、マグロ、タコ、豆腐、山芋、水菜、舞茸、アボカド、みょうが、卵)から、客の好みに合わせて乙な酒の肴をこしらえてくれる。その他、自家製の「カキのオイル漬」( 10月〜4月のみ)、「秋刀魚、ししゃも」のスモークなど、どれをいただいても実に美味。〆は「稲庭うどん辛味噌スープ」がいいだろう。

「悲しんだけどこの店ね、1年半後に取り壊されるのよ」

なんと、マンションに建て替えられてしまうそうなのだ。でも男前の姉さんはこんなことじゃへこたれない。すでに代々木上原駅前に「虎の子」(HP参照)の支店を開店させていた。この下北の本店、姿を変える前にぜひ訪ねてもらいたい。
「本日の食材」を組み合わせた「水菜とミョウガと真鯛の土佐酢和え」(写真左・¥ 800 )と「馬刺」(中トロ・¥ 1200 )。

「稲庭うどん辛味噌スープ」(¥ 700 )は〆にうってつけの逸品。胃袋に優しい上品な麺と濃い目のスープが、酔った体に心地よく染み入る。

ご要望により、店主萩原氏はシルエットのみのご登場。ぜひ実際に店を訪れて、その人柄を確かめてみてほしい。 店内左手の桜の幹からは、小さな枝もちらほら。春には花見酒も楽しめるとか。萩原氏のセレクトによる銘酒の数々も店内を彩る重要なアイテム。

: DATA :
【虎の子】
住所:東京都世田谷区代沢5-32-14
小田急・京王井の頭線下北沢駅南口より徒歩5分
電話:03-3421-2347
URL:www.konyamo-toranoko.com/
営業時間:
18:00〜23:30(L.O 23:00)
定休日:
席数:18席
★シチュエーションPOINT
「大人の酒道入門編に!」