2007.8月 File.03

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「第21みくに丸」

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「刺激的な夜は更けて」

 

 

 


イラスト: 青木健

新宿二丁目はご存知の通り、その筋の人々が憩うパラダイスだ。メイン通りに面したオープンエアのバーは、土曜日ともなればまるでカーニバルの夜。異国人、地方から遠征に来たカマ、バイセクシャルたちで賑わっている。

滅多に行かない場所だけど、 30 歳で2度目の出版社に転職したころ、この界隈で知り合いが屋台のショットバーを経営していたので、当時よく飲んでいた。ある日悪酔いして、新宿公園で嘔吐していたら、背中を優しく撫でてくれる人がいるので、振り返ると、キムタク似の若い青年、
「大丈夫? 僕の家で休んでいったら?」
(ゲゲっ、そうか、ここはその筋の人々が集まる公園だったっけ)
と酔っ払いながらも、瞬時に冷静に判断、
「ありがとう、でも遠慮しとくよ」

こんな僕じゃなくても、これだけ美形なら他に男がいくらでもいるだろう、と思った。でもその世界の人々には、「ノンケが最高」という価値基準があるそうなのだ。

そう言えば1軒、「GAS」というショットバーがある。ここは、このホームページを制作してくれている「マイクロフィッシュ」というデザイン会社の小さい親分、 S 氏(女)に連れて行ってもらって気に入ってしまった。8人座れば満員御礼のカウンターだけの店。客層は9割がカマで、その他は僕と同様のノンケか女性客だ。小さい親分と初めて訪れた日、
「あら、タイプだわ」
と彼女を挟んだ横の、身なりのきちっとした、端正な顔立ちのビジネスマンが僕を見てつぶやいた。聞こえないふりをして、 S 氏の影に隠れて飲んだ覚えがある。

彼らにとっては心が開放される憩いのバーであり、僕らノンケが来ちゃいけない店かもしれない。でも、こんな異質な空間で、たまに酒を飲むのは刺激的なのだ。「GAS」の最大の魅力は、 36 歳前後かな、マスターの人柄だと思う。冗談を交えながら、人の話を親身になって聞いてくれる、すごく気持ちのいい人なのだ。なおかつ料金もリーズナブル、ここも連夜賑わっている。