今回諸事情により、紹介できなかった店を１軒紹介しよう。

スパゲティーといえば二昔以前、巷には「ナポリタン」と「ミートソース」の２種類しかなかった。喫茶店の話だが、当時、粉チーズは高価で、やたら振り掛けようものなら店主やウエイトレスにたしなめられたものだった。やがて飽食の到来とともに粉チーズも安価になり、昔の恨みを晴らすかのように、いまだスパゲティーに山盛りの粉チーズを振り掛けるクセは直らない。

恵比寿の「アンクルトム」はピカイチのスパゲティー専門店だ。思いつくだけのパスタの組み合わせをそろえ、その数 70 数種類。またパスタソースのベースだが、カルボナーラ、サラダ、スープ、アサリ、ホワイトソース、ペペロンチーノ、タラコ、醤油、トマト、唐辛子、ミートソースと 10 種類あり、一通り試したが、どれも文句なしの味わいだ。

カウンターから眺める職人の手さばきは見事で、麺茹での合間に具とソースをあおり、熱々の麺を絡めながらソースの乳化具合、粘度を確かめて茹で汁を注ぎ、パスタを仕上げるスピードは目を見張る。

お勧めは「ナス入りミートソーススパゲッティ」だが、イタ飯で言うラグーソースよりサッパリとして、トマトの酸味は穏やかで、嫌味な甘さは一切なく、塩加減が絶妙。麺のコシも程よく、ボリュームもそこそこで実においしい。変わり種としてミートソース、アサリ、タラコに納豆を組み合わせたメニューがあり、これが案外シックリくるもので、女性客に人気を博している。